Narrative

わが内に獣の眠り落ちしあとも 太陽はあり頭蓋を抜けて

溶ける魚

私なんかは素人なので、小説を書くとき、書き出しだけをキャッチーに仕立ててしまう。最初の一文だけに読者をひきつけられるよう力を込めて、文章全体は雑になる。しかし、溶ける魚はその磨き上げられた書き出しが延々と続いているような感覚になる。とにかく私を惹きつけて惹きつけて、読み終えた途端そのテンポのまま糸が切れたように放り出される。空っぽの心のまま真っ白な活字の外に追いやられるのだ。この喪失感がやみつきになってしまう。